魅力を再認識!?北川民次の世界
皆さんは、北川民次という名前を聞いたことがあるでしょうか。
彼は、静岡県出身の芸術家です。同郷と言うこともあり、私は幼い頃から彼の作品を目にする機会がありましたが、その名を知る人はそう多くはない印象でした。しかしつい最近、彼の名はメディアで大々的に紹介されることになったのです。そうです、前東京都知事の桝添氏が購入した美術品の中に、彼の作品があったのです。ここで初めて目にしたという方も多いのではないでしょうか。
北川民次は、芸術活動を始めた初期の頃は油絵を描いていました。その後ニューヨークに渡り、アートスチューデンツリーグに進みます。ここでジョン・スローン氏を師事し、1921年に同校を卒業しています。
彼の作品は独特の表情をした人物が多く描かれていますが、この作風は、後に彼がキューバを経てメキシコに渡り放浪生活を続けたことが大きく影響を与えています。メキシコではサン・カルロス美術学校にも進んでおり、こうした彼のメキシコでの美術活動が95歳まで続いた彼の芸術家生活に多大な影響とエネルギーを与え、彼の作品に力強さを与えています。
北川民次の作品、具体的にどのような作品があるのでしょうか。
メキシコ絵画の影響を受けた力強い描線と色彩は高い評価を得て、後に二科展の会員になるきっかけともなった「タスコの祭日」が出品されます。
1937年に描かれた「タスコの祭日」、 現在は静岡県立美術館に所蔵されています。メキシコの民衆が集まり、硬い表情に覆い隠された「より大きな自由を得ようと、強い信念のもとに戦う精神世界」が描かれているように感じられます。
北川民次が過ごしたメキシコの時代が作品の中にエッセンスとして投入されており、人々が自由を求めるが故の緊張・真剣さが表れています。単に美を追求する芸術性ではなく、どこまでも現実に喰い下がっていくような迫り来る迫力がこの絵画に表現されています。
意外なきっかけで日の目を見ることになり、改めて魅力を再認識されるかたちとなった北川民次。メキシコの人物や風俗にリアリズムを追求した、力強い絵画を数多く残しています。